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放課後のグランドから聞こえる声は多分……熱血野球部だな
「翔」
『ん?』
「私とキスしている時に考え事ですか?」
あっ……ばれたらしい
『てかさ……俺が生徒会室に来た途端、押し倒すのもどうかと思うけど』
「つい」
『つい?』
「つい……可愛すぎて」
『可愛い言わない』
「可愛いものは可愛いんです」
俺は男だし、可愛いとか言われるのはなぁ……
『そうだ』
「はい」
『燕羽の従兄弟が生徒会に入りたいとか言ってた』
「生徒会に?」
『うん……伝えたからな』
「クスッ」
『何だよ』
「伝えるも何も、翔が決めればいいですよ」
『でも、和海が会長だし』
「そんなものは所詮、肩書き程度の物でしかありません……翔が決めた人を私が嫌だと言った事がありますか?」
『う~ん』
確かに燕羽の時も俺が入れたいと言ったような
「貴方は私より人を見抜く目を持っていますし」
和海の膝に頭を乗せて天井を見つめた
髪を撫でる手の心地好い 感触が好き
頬を撫でる和海の髪に指を絡ませながら静かに言った
『俺はさ、嘘をつかれたりするのは余り気にしないけど……利用されるのは嫌』
「知っていますよ……翔は嘘を見分けるのが上手い……そしてその嘘に騙されたふりをするのも」
『何だろな……ムカつく嘘とか傷付け合う嘘には乗らないよ……だけど、その人の為につかなければいけない嘘も中にはあるだろ?』
「そうですね」
『だからと言って、嘘がいいとは言わないけどね』
「はい」
『俺が一番ムカつくのは、俺を使って利用しようとする奴』
「誰かに利用されたのですか?」
『ううん……』
燕羽の従兄弟だからしばらく様子を見ようと思った
「では、翔を利用しようと企む命知らずの生徒が居る訳ですね」
『確かに命知らずだね……って、怖いから!』
「大切な翔を利用したり傷付けたりするような奴らは全て私の敵ですから」
『昔から和海は俺を護ってくれたよね』
「まだまだです」
『でも、和海が居るから俺は笑えるんだ』
「翔の言う事だけには従います……何でも」
『ちょっとすぐには決められないから時間を頂戴』
「わかりました」
だけど彼は昔の紫乃と同じ匂いがした
いや、もしかしたら紫乃を上回るかも……
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