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「何でも一人で考え込まないように」
『大丈夫』
そんな会話をしていたらノックが聞こえた
「どうぞ」
いつものように気にせず和海の膝の上に頭を乗せたまま雑誌を開いた
「失礼します……演劇コンクールの予定が決まりましたので資料を」
「ちょっと待っていて下さい」
「はい」
和海は資料に目を通しながら俺の髪を撫でた
視線を感じたから少し離れた場所で立っていた人を見つめながら尋ねた
『演劇部の公演って今年は何?』
「えっ…あっ、ぼ、僕?」
『貴方部長でしょ?』
「はい、今年は真夏の夜の夢を」
『へぇ……妖精が出て来る話だよね』
「よくご存知で」
『て事は……嫌でもドレスを着る奴が最低でも二人はいるね』
「そうなんですけど、女装の似合う部員は演技がイマイチで演技が上手い部員は女装が似合わない奴ばかりで頭を抱えています」
『そうなんだ』
「翔さんのような人にやってもらいたいです」
『俺、演技全く出来ない』
「立ってるだけでも大歓迎です」
『あははっ』
「演劇部の部費を削られたいですか?」
「あっ、申し訳ありません」
『和海、冗談なんだからそんなに怖い顔しないの』
髪を引っ張りながら顔を見つめた
「痛いです……大体わかりましたので部費その他に関しては冬矢に任せておきます」
「ありがとうございます」
演劇部なんてあったんだ
『ちなみに演劇部の部費はいくら?』
「コンクールに出場となれば両手ぐらいでしょうか」
『両手……じ、十万?』
「いえ」
『ま、まさかの百万?』
「衣装や舞台セットなどにもよりますが、うちの演劇部はここ数年優勝していますし出し惜しみはしません」
『びっくり……』
部活に興味はないけど、ちょっと驚いた
「翔は妖精の魔法にかからないで下さいね」
『和海が構ってくれる限りは大丈夫』
「ではずっと大丈夫です」
『妖精か……』
まぁ、俺の近くには悪魔か魔王しかいないから寄り付かないだろうけど
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