繭のライバル?

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急に手が止まった繭 どうしたんだろ…… 「どうしたの?」 「夕食をみんなで食べるのは初めて」 「繭……」 そっか ずっと繭は一人で 「これからはずっとみんなで食べよう」 「うん」 夕食はみんなで食べるのが当たり前だと思っていた だけど繭にとってみんなで食べる夕食は危険だったんだ ずっと一人で夕食を…… そんな事を考えていたら、堪らなく悲しくなった 「グスッ……繭っ…これからはみんなで食べよう」 「うん」 「燕羽、甘口がお前の涙で辛口になるぞ」 「ごめん」 「燕羽」 「うん」 「僕は今すごく楽しいし幸せだよ」 「繭……ホント?」 「うん、だから泣かないで」 「グスッ…わかった」 ジャージの袖で涙を拭いてカレーを食べた どんなにお金があっても幸せにはなれないんだ 逆に、幸せはお金では買えないものなんだ 「冬矢も俺も繭の味方だよ」 「うん」 そしてカレーを食べながら思い出した 「あっ、宿題……今日はフランス語」 「僕が教えてあげる」 「ありがとう」 三年になってフランス語を選択した事に激しく後悔していた 「何でうちの学園はフランス語とかドイツ語なんだろ」 「さぁな、和海の趣味だろ」 「んなバカな……」 夕食の後、部屋で教科書を見つめながら溜息をついた 「さっぱりわからない……なんだこれ」 「これはね」 と言って教科書を見ながら流暢なフランス語で読んでくれた……けど 「自己紹介だよ」 「自己紹介……そう言えば明日フランス語で自己紹介するとか言われてたような」 「じゃ、燕羽の趣味とか好きな食べ物は?」 「えっと……趣味はお、折り紙で食べ物はカルボナーラ」 「じゃ、ノートに書くから覚えて」 「わかった」 繭はスラスラとノートにフランス語で自己紹介を書いてくれた 「あの」 「?」 「出来ればふりがなも」 「うん」 フランス語の上にふりがなを書いてくれた さすがだ…… 「ありがとう、繭」 「じゃ、最初から…発音に気をつけて」 「わかった」 発音も何もない だってサッパリわからないし だけど繭は俺が覚えるまで根気よく付き合ってくれた でも……教え方が何となく会長みたいだったのは気のせいにしておこう
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