繭のライバル?

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「はぁ……」 「どした~?楓が溜息とか」 「ん~、最近忙しくて学園に行けない」 「ちょっ、楓の口からそんな言葉が出るとは」 「何?俺は真面目な高校生だけど」 「おぃおぃ……もうすぐポスター撮りだから着替えろよ」 「わかった」 もう何日燕羽の顔を見てないかな…… 衣装に着替えながらまた溜息をついた (えっ?どうしてですか!) (だから今回はさ) (納得行きません!やっとこの仕事を掴んだのに) (相手が悪かったと思って我慢してくれ) (そんな……どうして) (さっき、ぶつかったのが気に入らなかったらしい……) (それは向こうからぶつかって……でも僕も避けられなかったから謝りました) (雪魅の親からさっき電話で頼まれたんだよ……悪いな) うるさいな 喧嘩じゃないみたいだけど丸聞こえだし 「ううっ…っ」 ん? 彼は確か…… 「食べる?」 「えっ……あっ、ごめんなさい…誰もいないかと」 「気にしないで」 プリンを食べれば元気になる……はず プリンを手の平の上に乗せてタオルを渡した 「ありがとうございます……あの」 「ん?」 「楓さんですよね」 「うん」 「僕、大ファンなんです……だけどこんな所を見られちゃって恥ずかしい」 恥ずかしい……か 鏡を見ながら静かに尋ねた 「君って恥ずかしい時に泣くの?」 「えっ?」 「その涙は悔し涙に見えたのは気のせいかな」 「………それは」 「別にいいけどね」 メイクを確認して髪飾りを付けた 「やっぱりダメみたいです」 「ダメ?」 「今回の仕事の為に頑張って頑張って……そしてやっと手に入れて認められたと勘違いして……」 「勘違い?」 「認められたからこの仕事を手に入れたと思い込んでいました……でも、簡単に他の人に持っていかれてしまって……この仕事で母に少しは楽をさせてあげられると思っていたのに……あっ、ごめんなさい…ベラベラと勝手に」 「君は確かモデルだったよね」 「嬉しいな、僕の事を?」 「前にも一度だけこのスタジオで見たから」 「あっ、雑誌の表紙の仕事を初めていただいた時です……楓さん達が居ても声すらかけられない新人でした……と言っても今も声なんてかけられません」 「俺は普通の人間だし、特別でもなんでもないよ」 「いえ、楓さんは有名すぎるギタリストです」 「有名ね……アホくさ」 別にそんなものの為にギターを弾いている訳じゃないのにね
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