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「有名になるためにギターを弾いてる訳じゃないし、有名だと誰が決めるのかなって……」
「それは」
「でも、悔しい気持ちはわかるよ」
「この業界は親が有名だと息子も新人でも有名……それが現実だと思い知らされました」
「へぇ……」
「ごめんなさい…そろそろ戻ります」
「君の名前は?」
「えっ?」
「嫌なら無理には」
「いえ、成美です」
「俺、成美君みたいな子は嫌いじゃないよ……じゃね」
「は、はい!頑張って下さい」
成美って言うんだ
前にこのスタジオで見た時は、撮影前に一人で何度も表情をつくって練習してたっけ
モデルなんて練習なんか必要ないと思ってたけど、彼を見てちょっと考えが変わったんだ
スタジオに入るとまだ撮影が終わっていなかった
「楓さん、まだ撮影が……申し訳ありません」
「いいよ」
椅子に座って雑誌を読もうとしたらカメラマンの声が聞こえた
「雪魅君、もう少し笑って」
「雪魅はこの顔が好きなの」
「しかし……」
「雪魅の好きなように撮ってくれないならママに言うよ」
「わ、わかった」
なんだあれ……
雪魅って確か
「ったくまいるよな~」
「ん?」
「彼のワガママのせいで撮影が進行しない」
「成る程ね」
「親はあの大御所女優でさ……最近はハリウッド映画ばかりで今は海外に住んでるみたいだけど、その一人息子が突然単身で日本に来たらしい」
「あのさ……」
「どうした?」
「雪見だいふく食べたい」
「ぶはっ!楓ならそう言うと思った」
控室に戻るのも面倒なので、雑誌を読みながら撮影が終わるのを待つ事にした
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