繭のライバル?

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カメラマンの気の使いようが滑稽に見えた 「突然だけど、雪魅君はどうしてこの仕事がやりたかったのかな?」 「別にやりたい訳じゃないの……でもさっきいきなりぶつかった奴にムカついたからなの」 「謝らなかったの?」 「謝ったけどムカついたの!それに暇だったし……もう、いいから早くしてね」 ムカついたから…… 暇だから……… 成美が努力して手に入れた仕事をそれだけの理由で…… 「あのさ」 「ん?」 「今度のプロモに使いたいモデルが居る」 「珍しいな、楓からそんな事を言うなんて」 「いい?」 「ああ、楓に任せる」 「ありがとう」 ムカついたから俺は成美をトップモデルにしたかった 暇だから仕事を適当にする奴なんかが足元にも及ばないくらいのモデルに 「はい、お疲れ様」 「疲れたの」 やっと終わったらしい 雑誌をテーブルに置いて立ち上がるとそいつが近付いて来た 「サイン欲しいの、雪魅さんへって書いて」 「嫌」 「えっ?雪魅がサインを欲しいって言ってるの!」 「だから嫌だっていってるの」 「なんなの?雪魅のママに……」 「言えば?そんな脅しは通用しないし、別にメジャーで仕事出来なくても俺達は構わないしね……大福ちゃん」 「なっ!大福じゃなくて雪魅なの」 やっぱりこいつ嫌い…… 「世の中、君を中心にまわっている訳じゃないんだよ」 「うるさいの!みんな雪魅に頭を下げる奴しかいないの!」 きっとこいつに何を言っても無駄だろうけどね 「俺達の撮影は見学お断りだからさようなら」 「ムカついたの!」 「クスッ」 怒ってスタジオを出て行く後ろ姿を見つめながら言った 「やっぱりこの時期に食べる雪見だいふくはお腹を壊しそうだね」 世間知らずな大福ちゃん 泣かせちゃうから楽しみにしててね
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