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「我慢しなくてもいいよ……痛いなら痛いって言えばいい……人間なんだから」
「痛いと言えば痛みが消えますか?」
「……やっぱり繭君はいい子」
「やめてください」
「ごめんね」
今まで辛い目にあわされた事のある瞳だった
だからそれ以上は何も言わなかった
「はい、オッケー」
「ありがとうございました」
「うん」
繭は自分の制服をはらう前に蒸しパンについた砂を丁寧に叩き落として出て行った
「う~ん」
「楓もお手上げみたいだな」
「なんかさ、掴めないんだよね……彼の気持ちと言うか考えが」
「成る程ね」
「燕羽と居る時とは全然違う表情を見せたから」
「どっちが本当の彼なんだろうな」
「まだわからない」
「でも、嫌いじゃないだろ?」
「うん」
「だけど少し気をつけて見ていた方がいいぞ」
「わかってる」
「じゃ、俺は行くから」
「うん」
顔を上げた時の瞳の光りは決して負けたような感じではなかった
普通なら悔しくて泣いてしまうかも知れないのに彼は違っていた
何故、あんな瞳でいられるんだろう
それが知りたくてもう少しだけ彼に踏み込んでみようと思ったんだ
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