繭のライバル?

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「………燕羽?」 「俺は繭を弟みたいに思ってたつもりだったのに……繭は違ってたのかな……もしかして俺が無理矢理愛情を押し付けてただけだったみたいだね」 「えっ?」 すごく悲しい 嘘をつかれた事よりも、何も言ってくれない事が悲しかった 「……ごめんね」 「燕羽」 カバンを取りに行き、そのまま保健室に向かった 「ん?増えてるな」 「先生、繭が転んで怪我を」 「わかった」 先生は繭の怪我を見て俺を見た 「転んだ……か」 「………………」 やっぱり先生も気付いたんだ だけどそれ以上は何も言わずに治療してくれた 「よし、行くぞ」 「はい」 「………………」 「繭、先生が送ってくれるから」 「わかった」 「あっ、先生」 「伝えておくよ」 「ありがとうございます」 教室に冬矢が居なかったから早退する事が言えなかった 誰も話をしないままマンションに着き、お礼を言って車を降りた 「ゆっくり休め」 「はい」 俺はダルくて今は何も考えられない エレベーターに乗った途端、気持ち悪くなって思わず座り込んでしまった 「燕羽、大丈夫?」 「ごめん」 「掴まって」 「ありがとう」 繭に肩を貸してもらいながらやっと部屋までたどり着いた 「少し寝るよ」 「うん」 きっと風邪の熱じゃなくて、繭にはぐらかされた事がショックだったのかも でも、繭は俺を心配させない為にあんな嘘をついたのかも知れない 「そんなに頼りないかな……」 俺が頼りないから? きっとそうだよね 繭は悪くない 悪いのは俺 ベットの中で寝ながら天井を見つめていたら、涙が溢れてそのまま頬を伝いシーツを濡らした 「情けないな……」 繭を護る事すら出来ないなんて でも、繭は強いはずなのにどうして…… 黙ってやられるなんて有り得ないよね ダメだ 頭がぐるぐるして考えられないや 薬が漸く効いてきたのかな 眠くなって来た…… 少し眠れば落ち着くかも知れないね
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