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山肌から陽が昇り、こまかい光彩が降り注ぐ。
蒼月をともしびに侵圧していた夜の帳(とばり)はもう消えた。
準備はいいか―――霊剣使いの『月弥』が言った。
口は悪いが、人知を越える身体能力を備えている。
つぎに、東国一の封滅師・『北條潤一郎』。
魔鏡使いで、多重人格を背負う可憐少女・『静季』。
筋骨隆々。巨大石火矢を使い、圧倒的な破壊力をもつ巨漢・『羅巌』。
発明家にしてイタズラ好きのジジイ・『与作権兵衛』。
彼らを束縛することなく統括しているのが、月弥だ。
いまは騒動が起こるのを心待ちにしている。
客が来ないと商売があがったりということもあるが―――彼らはその事件に秘められた”面白さ”に重点を置くらしい。不況とうたわれるこの錆びれた社会において、金は必要不可欠なのだが、どうもこの奇の集団は―――読んで字のごとく、奇怪な理念を抱いているようだ。
今回も、ドでかい依頼が舞いおりた。
相良城に巣食う鬼を、退治してくれといったものだ。
報酬に糸目はない。望むほどくれるという。
ちなみに、与作は今回、留守番である。
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