死神が待っている

2/17
76人が本棚に入れています
本棚に追加
/45ページ
「本当はしっかり直接言いたかったんですが、勇気がないのでメールで言います。まだ知り合って間もないですけど、僕なんか星野さんに釣り合わないのも分かってますけど、良かったら付き合ってくれませんか?」  私は男を男として見ると、訳も無く軽蔑してしまい、急に冷めてしまうタチだった。  今は彼氏は要らない。  けれど、嬉しくなくはなかった。  だからこうして、自分が何て言って断ったかもよく覚えていない告白のメールをなんとなく保護している。  私はコンビニの店員さん。  吉田君はお客さん。だった。  去年の十一月、高校生くらいの暗い顔した客に話しかけられて、名前とアドレスを書いた紙を渡された。 「友達になりたいんです……嫌なら破って捨てちゃっていいので。良かったらメールください」  私は客が帰ってから紙をくしゃくしゃに丸めて、ゴミ箱に放り込んだ。  それを、バイトが終わる直前に拾ってポケットに入れた。  お風呂で鏡に向かった時、化粧した顔を少し眺めた。  こんな女の何がいいんだろう。  青白いし目は小さいし、スタイルもいいとは言えない。  化粧を落としたら、眉毛と目が無くなった。もはや顔じゃない。  体を拭きながらお風呂から上がる。一人で暮らすには少し広すぎる部屋。これくらい散らかっている方が、寂しくない。  私は中学の時から着ているパジャマに着替えて、しわくちゃの紙を広げた。 「吉田隆紀」  どんな人なんだろう。 「初めまして。星野由希です」  すぐに絵文字のいっぱい入った返事が来た。 「メールありがとうございます。でも、いきなり迷惑ですよね?」  うん、迷惑。 「私、こういう事初めてで、どうしたらいいかわかんないんですが」 「僕も初めてです……。とりあえず、自己紹介しますね?」
/45ページ

最初のコメントを投稿しよう!