4人が本棚に入れています
本棚に追加
「赤江 了だな」
高松 玄は警察手帳を見せながら言った。
男はコクリと頷いた。
高松は一枚の紙を赤江の前で広げ、「詐欺容疑で逮捕する」
抵抗も言い訳もしなかったが、祖母加代子の顔が脳裏に浮かんだ。
<8ヶ月後>
「主文」と言った裁判官は一つ間をおき。「被告人を懲役五年の刑に処す」と告げた。
執行猶予無しの実刑判決。
赤江は法廷の天井を見上げ、ギュッと目を閉じた。
後ろの傍聴席から加代子のすすり泣く声が聞こえる。
閉廷の声と共に警備の人間に連れられ法廷を後にする時、
「了ッ」と消え入りそうな声が聞こえたが赤江了は、振り向く事はしなかった。
幼くして両親をなくした自分を育ててくれた祖母を裏切った。合わす顔がなかった。
ただ判決の言葉より、祖母の声が、了の胸を締め付けた。
最初のコメントを投稿しよう!