プロローグ

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「赤江 了だな」 高松 玄は警察手帳を見せながら言った。 男はコクリと頷いた。 高松は一枚の紙を赤江の前で広げ、「詐欺容疑で逮捕する」 抵抗も言い訳もしなかったが、祖母加代子の顔が脳裏に浮かんだ。 <8ヶ月後> 「主文」と言った裁判官は一つ間をおき。「被告人を懲役五年の刑に処す」と告げた。 執行猶予無しの実刑判決。 赤江は法廷の天井を見上げ、ギュッと目を閉じた。 後ろの傍聴席から加代子のすすり泣く声が聞こえる。 閉廷の声と共に警備の人間に連れられ法廷を後にする時、 「了ッ」と消え入りそうな声が聞こえたが赤江了は、振り向く事はしなかった。 幼くして両親をなくした自分を育ててくれた祖母を裏切った。合わす顔がなかった。 ただ判決の言葉より、祖母の声が、了の胸を締め付けた。
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