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私は、麻美に向き直った。
麻美は相変わらず焦点の合わない目をしたまま、ぶつぶつと何かを呟いている。
「あんたが悪いの。あんたが悪いんだから!」
麻美がふらふらと私に近寄ってくる。
その姿は、昔見たホラー映画の殺人鬼を連想させた。
「だから、誤解よ!麻美!信じて!」
しかし、私の声は麻美には全く届いていないようだ。
麻美はふらふらと私の目の前までくると、がしりと私の腕を掴んだ。
ギチギチと麻美のネイルが施された長い爪が腕に食い込む。
「ひっ…!」
恐怖と痛みで声が漏れる。
「嘘つき…、嘘つき…、嘘つき…、嘘つき…」
麻美は充血した目をギョロギョロと小刻みに動かしながら、私の腕を掴む手に力をこめる。
「麻美……っ!痛い!!」
私は麻美の手を外そうともがく。しかし、麻美の手は外れるどころか爪が深く食い込んできてブレザーの繊維がぶちぶちと切れているのが分かった。
「嘘つき…!嘘つき…!!」
麻美の呟きがだんだん大きくなってくる。
「嘘つきは死ねええええ!!!!!!」
麻美の叫び声に、私は反射的に顔をあげる。
麻美の振りかざされる手が見えた。
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