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「そんな言い方はないんじゃない?」
凛とした声が響いた。
麻美が、声をした方を向く。
私もゆっくりと視線を声の主に移した。
「紫空…。」
麻美が呟く。
私と、麻美が向いた方向には、私達と同じ青いブレザーを着た黒いボブカットの少女がいた。
「別に、ありさが男と遊んでた証拠、ないじゃない。」
紫空が静かに言った。
「でも……!!!美恵子達が、ありさと彼氏が駐車場で楽しそうに喋ってたって…!!!」
顔を真っ赤にした麻美が紫空にくってかかる。
「話してただけでしょ?」
紫空が呆れたように言う。
「それに…、彼はありさの彼氏なの?」
紫空が私の後ろで、つまらなさそうに私と麻美の様子を伺っている少年に視線をむける。
「違うわ!彼氏なんかじゃない!初対面よ!!ただ、この人に雪の事を聞かれて少し喋っただけ!」
私は力強く否定する。
こんな奴が彼氏なんて、死んでもごめんだわ!
「でしょうね…。」
紫空は、独り言のように呟くと少年から視線を外し、麻美に向き直った。
「麻美、納得した?ありさは、ただ雪の事を質問されて答えていただけですって。」
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