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休み時間、文庫本を読んでいる時も誰か、一人は紫空の席に自分の椅子を持ってきて、本を読む紫空を眺めながらお菓子を食べていたし。
教室移動の時も紫空が教室から出ようとすると数人の女の子が、後ろをついていって、紫空に喋りかけた。
授業中も、クラスの一番力を持っている派閥の女の子達が、先生とふざけあっている時に違う派閥の紫空にも話しをふったりするのも、普通だった。
紫空の周りには、人が自然に集まっていた。
紫空は普段は無口だけど、クラスで何か決めないといけない時があると、進んで手をあげる子だったし。ノリもいいから、派手な子達にとっては、楽しいいじられキャラだったし、先生も紫空の事を気にいっていた。
いつの間にか、紫空はクラスで一番大きい派閥のメンバーとして認められていた。
その時、私は始業式の日以来の努力もむなしく、クラスにいてもいなくてもいいような小さな派閥のリーダーになっていた。
紫空は、何も努力しなくても自然に人が集まってくるような子だった。
そんな紫空と、世界中の未知を寄せあわせたような、こんな訳のわからない男が知り合いだなんて…。
私は、軽く少年の顔を一瞥すると気付かれないようにそっと溜息をついた。
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