交差点の彼女。

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家の玄関に着いた。 「じゃあ、俺は帰る」 「ありがとうございます……」 弭間くんは何か言いたげにしていたが、結局何も言わずに帰って行った。 はぁ……。 私は玄関のドアを開ける。お母さんが、荷物を抱えて出てくる。 「おかえりなさい」 「ただいま……って、何、その荷物?」 「ああ、ごめんね、仮名実。お母さん、ちょっと家出るから」 「はあ!?」 「お父さんには言ってあるから。きちんと学校行くのよ?」 それだけ言い残して、お母さんは、家を出た。 ……靴を脱いで、家に上がる。 お父さんは、まだ帰って来ていない。 里奈はバイトだし。 秋雄は部活が大会近いし。 隆志は家が遠い。 一人っきりの家。 「……やだなぁ」 学校に、行きたい。 こんな家、大っ嫌いだ。 「誰か、助けて……」 久々に泣いた気がする。
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