交差点の彼女。

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「あ、おかえり、やっくん」 「エロ本、何か視えたか?」 「殺すぞ貴様。特に何も」 「そうか」 寧は部室の椅子に、どっかりと腰を降ろした。 この二紙(ふたがみ)高校には校舎の他に冷暖房完備のクラブハウスがあり、毎年使用権を巡って激しい争いが繰り広げられる。因みにその争いとは、後期期末試験である。成績上位者が部活に所属していた場合、その部に来年度のクラブハウスの使用権が与えられる。文武両道の生徒を作り出す為のシステムなのだろうが、意外と上手く作動して、県内でも指折りの進学校になっている。 そんな冷房が効いたクラブハウスで、『ランチキ』の面々は会議の真っ最中であった。 表向き『文芸部』のこの会は、『恐怖』を取り除く会である。 『ランチキ』とは、ランニング・チキン。逃げる臆病者の意味だ。 怖くて怖くて仕方が無い。仕方が無いから逃げる。逃げて逃げて、もう逃げられなくなったら、その『恐怖』を取り除く。 我ながら回りくどいネーミングである。
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