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放課後はいつだって憂鬱だ。
体育の時間。
友達とのおしゃべり。
お昼ごはん。
あんなに楽しかった時間があっと言う間に過ぎて、家に帰るだけ。
友達は、学校が好きだなんて珍しいと言う。
授業は確かに嫌だけど、けど、高校生の世界のほとんどなんて、学校生活によってると思う。
それを好きだと言う事が、変だとは思わない。人それぞれだろうし。
「やだなぁ……」
私は溜め息を吐く。
帰りたくない。
今、私の家は大変な事になっている。
お父さんとお母さんが喧嘩している。
原因が何かは分からないけど、喧嘩しているのだ。
あんなギスギスした家には、帰りたくない。
交差点に着く。信号待ち。
ぼんやりと視線を彷徨わせていると、眼に付くものがあった。
「あれ……?」
違和感。
何が違うか分からないけど、何かが違う。
スクランブル交差点の向かい側。
それは、髪の長い女の人だった。
夏なのに、晴れているのに、黒いレインコート。
でも、私の感じている違和感は、そこじゃない。
「なんだろ……」
何かが違う。
何かが。
信号が青になる。
私は歩き出す。
女の人は動かない。
何だろう。
この違和感は。
女の人に近付く。
すれ違いざま、
「ナンでワかったの?」
え?
時間が止まる。
振り向くと、女の人はいなくなっていた。
「……」
信号が赤に変わる。
交差点を、車が通る。
「何……?」
これだから、放課後は憂鬱だ。
嫌な事が、起こるから。
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