180人が本棚に入れています
本棚に追加
あの女に遭った翌日、帰り道。
「…………」
かつ、かつ、かつ、かつ
こつ、こつ、こつ、こつ
私の足音に重ねて、ずれた足音。
誰かが、ついて来ている。
振り返る。
誰も居ない。
気の所為かと思って、歩き出す。
かつ、かつ、かつ、かつ
こつ、こつ、こつ、こつ
気の所為じゃない。
誰かがついて来ている。
ぞっとして、私は走り出した。
かつかつかつかつかつかつ
こつこつこつこつこつこつ
「やっ……」
なんなの……?
とっさに、公園のトイレに飛込む。
一番奥の個室に入り、じっと息を潜める。
こつ、こつ、こつ、
来た。
私は、個室のドアと反対側の壁に填められた板をゆっくりと外す。
この公園のトイレは悪ガキにいたずらされて、壁に穴が空けられている。大体修理はされたけど、女子トイレの一番奥の個室はまだ修理されてない。板を外すと、ちょうどマンホールくらいの穴が現れた。
ギィィィィィィィィィィ
「……!」
ドアを開ける音。悲鳴を押し殺す。
どうやら、個室を一個一個調べるつもりのようだ。
急いで穴から外へ出る。
トイレの周りは茂みになっている。なるべく音を立てないように、通り抜ける。枝が引っ掛かって痛い。
公園の外をぐるっと回って、入り口へ戻る。
公園を背に、走る。
途中、振り返ってトイレを見た。
ちょうど入り口から、黒いレインコートを着た女が、
「おかえりなさ……どうしたの? そんな汗だくで」
お母さんに驚かれた。
気付くと、家に着いていた。
最初のコメントを投稿しよう!