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いつもそばにいる人は、38歳の女の人で
僕はずいぶん前に、この人が"お母さん"だということを知った。
僕の通う学校や、特別支援センターにいる子供たちにも"お母さん"はいて、"お母さん"はお迎えに来たり、一緒に帰って同じ家で寝たりする人だって先生が言っていた。
僕は自閉症。
いちいちそれが何なのか、聞かなきゃわからないことばかり。
聞いても時々、その意味がわからないこともある。
そんなとき僕は、お母さんを質問攻めにして困らせてしまうんだ。
"誕生日って何?"
『マーリィが生まれてきた日のことよ』
"生まれてきたって何?"
『マーリィがお母さんのおなかから、赤ちゃんになって出てきたこと』
赤ちゃんになる?
おなかから出る?
わからない。
しばらくたったある日、お母さんは妊婦さんって友達と僕を会わせてくれた。
おおきなお腹の妊婦さん。
そのおなかには赤ちゃんが入っていて、もうすぐ生まれて来るんだという。
"赤ちゃん"は、前に見たことがあって知っていた。
それからまたしばらくして、妊婦さんから生まれた赤ちゃんを、僕はお母さんと見に行った。
くしゃくしゃの顔で泣く赤ちゃんを、妊婦さんは大事そうに抱いていて『昨日生まれた赤ちゃんよ。昨日がこの子の誕生日』
僕に見せて教えてくれた。
そして、赤ちゃんがおなかから出てきたから、"妊婦さん"はこの赤ちゃんの"お母さん"になったんだと、僕のお母さんは言ったんだ。
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