入学式

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「言葉通りだ 家族の名前などない そんなもの、必要と思ったこともない」 家族など、思ったことは一度たりとない ギロッ、とサツキが一瞬教室を見渡すと 皆、バツが悪そうに目をそらした ……ただ一人を除いては 「へぇ、 それってなんかかっこいいね!」 「……そうかい」 かっこいい、 随分と縁のない言葉だ 最後に聞いたのはいつのことだろうか 「じゃあじゃあ、 私はね……」 「君はミトンだ それだけ分かれば十分」 というか名前を聞くつもりもなかった だが、彼女はサツキの言葉を聞いていない 「ミトン・フォーレストよ」 フォーレスト 周りが落ち着いているのは自己紹介でもそう言ったからだろう ただの偶然なのか、それこそ関係があるのか 現世に疎いサツキでも聞いたことのある名前だった フォーレスト家、 それは確か海の向こうにある、とある大陸の名家 優秀な武家で 主に戦場に暮らしているといわれるくらいだ 色々な国に散らばっているため、この国にいてもおかしくはないのだが、
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