光とバイオリン 【雪クジラ】

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   そんなことをぼんやり考えていると、不意に僕の目へ飛び込んでくる物があった。窓の外のぼたん雪だ。  もうそんな季節なのか、と少々感慨深げに惚けつつ、ホロホロと落ちてくるその綺麗な珠に見蕩れる。  いいなあ。雪はいい。冬の花だよ。春でいう桜だ。  僕は、「桜吹雪」って言葉は、桜が吹雪いているようだからじゃなくて雪が桜のようだから付けられた名前だと思う。  雪は、冬に降る花びらだ。きっと、光合成だってしてる。日に当たれば、光るしな。  僕は席が窓際なことに改めて喜び、空を見上げた。  雪は、天高くから降り注いでくる。真っ黒な雲から、神秘的に生まれてくる。  ……真っ黒な雲?  僕は何か引っかかり、目を凝らして雲を見た。  真っ黒だ。  おかしい。  雲は、少し灰色がかっている黒だからこそ良いんだ。あそこまで黒い雲は、見たことがない。  ……あれ?  僕は、更に目を凝らしてようやく気が付いた。  あれ、雲じゃない。  ――クジラだ。
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