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突然僕の視界は、真っ白になった。
理由は、簡単。転んだのだ。
「……つめたっ」
なんだよ、全然良いものじゃないな。ただ冷たいだけだ。雪は。
雨と同じだなあ……。僕は雨も好きなんだが、濡れるのは嫌いだ。雨の姿や音が好きなんであって、関わりたくはない。雪もそんな感じだ。
僕はおもむろに立ち上がって、大雑把に顔の雪をはたいた。服に付いたやつも、パッパと落とす。
皆は、こんな雪を投げあったりするのか……、凄いな、僕は遠慮したい。大体、こんな物丸めたって何が面白いんだろうか。
僕はそう嘆きつつ、近くの雪を軽くすくい上げる。寒い寒い。震えだした体に少々危機を覚えたが、なんとなく両手の雪を固めてみた。
両手からはみ出しそうだった雪は、包み込むと途端に小さく纏まり、揉むと更に収まっていった。ギュッと、強く固め、手を広げる。
そこには、黒く冷たい塊があった。
全くの、黒色だった。降り積もった雪からは想像もできない程、その色は相反した黒だった。
僕の赤みがかった両手に存在する、この黒い物体。
なんだろう、これは。
気が付く間もなく、僕はそれに魅了されていた。体の震えは止まり、寒気を感じることもなく、ただひたすらに黒を見詰め、その奥にある何かを探そうとしていた。
吸い込まれるような漆黒に、僕は視界を侵される。
雪に囲まれると、周りは白くなると思っていた。しかし、今の周囲は、限りなく暗かった。
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