2 同僚のアナタ

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簡単な食事会が終わると、井本さんは旦那さんの迎えで帰っていった。 幸せそうだなぁ。 なんて思いながら見送る。 井本さんの旦那さんは佐野さんという。 歳は3つ上なのに、院卒だから洋介のひとつ先輩らしい。 残された香那美と洋介は飲み足りなくて居酒屋へ行った。 初めて話したのに、洋介は気さくで話やすかった。 何より会社の人に言い寄らないというところが香那美を安心させた。 「ねぇ、香那ちゃんさぁ、前にどこかで会ったことないっけ」 相変わらず香那美のことを香那ちゃんと呼ぶのが気に入らないけど、それを除けば嫌な部分は見受けられない。 「望月さん会社の子には言い寄らないんじゃないですっけぇ」 安心しきって香那美は結構飲んでいた。 「言い寄ってないって。自意識過剰」 「すいませーん。って・・・会ったことないですよぉ。私、基本コンパとか行かないし」 「ちょっと待てよ。俺コンパばっかり行ってると思ってる?」 香那美は「きゃはは・・・」と笑いながら洋介の肩を叩いた。 「思ってるー。だって女の子大好きって顔してるし」 「好きだけど・・・そりゃ昔はさぁ、一年の半分くらいコンパ行ってたけど、社会人になったら仕事が忙しくって今は」 「週一くらい?」 「そうそう。・・・ってお前飲みすぎだろ・・・」 洋介はそう言うと、香那美の目の前のグラスを奪った。 「あー。あたしの焼酎ぅ。返して」 「ダメ」 洋介は香那美の焼酎を一気に飲むと立ち上がった。 「ほら、明日も仕事だしもう帰るぞ」 「えー。まだ十時じゃん・・・」 洋介は無理やり香那美の腕を掴んで立たせると、二人分の荷物を抱えて歩き出す。 「弱いんならそれなりに飲めよ・・・」 「弱くないよー。楽しいよー」 言いながら香那美は洋介の腕に抱きついた。 「おい・・・」 洋介は怒っているけど酔っ払いには何を言っても効果がない。 香那美は楽しくて笑うだけだ。 レジに行くと香那美は洋介から離れて一万円札をカウンターに置いた。 「ここは私が出します」 「いいから。俺が出す」 つまらない押し問答を繰り広げて、結局逃げるように香那美が先に外に出た。 夜の冷たい空気が火照った頬を冷やす。
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