1 新しいワタシ

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耳の下で切りそろえられた柔らかな髪の毛が、強くも弱くもない初夏の風になびく。 木陰から流れるその風は、汗ばむ日なたの空気とは違い、首筋からうなじをなでビルの谷間にすり抜ける。 体は自然と会社を認識し、無意識でも足が向く。 あんなにもできるはずがないと思っていた改革に、体はちゃんとついていっている。 嫌でも人間の順応能力の高さを認識させられる。 目には見えない部分―――心も、少しは変わっただろうか。 ブラウスに淡いベージュ一色のベストとスカート。 ダサい制服がようやくしっくり馴染んできた自分に、香那美は密かに問った。
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