2 同僚のアナタ

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「望月も本当によろしくよ。会窪ちゃん、既に一課の山ハゲに狙われてるし」 「え?」 「山本課長?」 香那美の驚いた声と洋介の『山本課長』が重なった。 二人は香那美をじっと見た。 「もしかして、会窪ちゃん気付いてなかったの?」 営業一課の山本課長。 四十五歳。 独身。 両サイドの髪の毛が薄く山のように真ん中だけこんもりしている。 仕事はできるらしいが他の魅力がない。 というか、時々オネエ言葉になるのがキモイ。 山ハゲって確かに何度か耳にしたけど、あの人のことか。 「確かに入社初日からやたらと話しかけてくるとは思ってはいたんですが・・・」 自意識過剰だと思って考えなかった。 「香那ちゃん青くなってるよ」 ははは・・・ 香那美はかすれた声で笑った。 たとえ独身でもあの人は絶対に無理だ。 っていうか、会社での色恋沙汰は本気で勘弁。 俯いていると、 「山ハゲは惚れっぽいだけだから、冷たくしてたら大丈夫」 と、井本さんがあまり意味のない励ましを送った。 「香那ちゃんさぁ・・・彼氏とかいないの?」 「・・・いないです。ってか、香那ちゃんって呼ばないでくれませんか?」 気付いて洋介に向かうと洋介は香那美のお願いをあっさり流して、 「それは面倒だなぁ」 と言った。 「さすがにひと月くらいで諦めると思うけど。それでもしつこかったら、ハゲって本人に言ったら?」 「ぅわっ。それはさすがにできません」 香那美は両手を振って無理だとアピールする。 「大丈夫よ。笑顔でさらっと言えば」 それができるのは井本さんだけだろう・・・ 若干困って顔が引きつる。 すると箸を遊ばせていた洋介が口を挟んだ。
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