2 同僚のアナタ

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「いやいや、実は山本課長だけじゃなくて、うちの課の鮫島さんもさぁ・・・」 「え!鮫島」 井本さんの驚きようからして、ろくな人じゃないんだろうと香那美でもすぐわかった。 香那美は『鮫島』という人が思い浮かばなかった。 入社して日が浅いので名前と顔がまだ一致していない。 その上、営業に絡む仕事はまだほとんどしていなかった。 ちなみに洋介は営業二課だ。 鮫島という人も二課なんだろう。 井本さんはストローを噛んでちらりと香那美を見る。 非常に言いづらそうだ・・・ 「えっと・・・その人は・・・」 「山ハゲよりは若いけど妻子持ち」 「冗談でしょ・・・」 またあの嫌な状況に陥りたくない。 けれどすかさず洋介が口を開いた。 「だったらいいね・・・けど、何故かパソコンのスクリーンセーバーが香那ちゃんだったよ」 キモッ・・・ 「鮫島かぁ。結構厄介だよね・・・・」 ずずずず・・・・ 井本さんの飲む音だけが響く。 香那美は完全に手が止まっていた。 「私・・・恋愛にかまける気ないですから。特に社内でなんてありえない・・・」 「知ってる」 井本さんが泣きそうな香那美の肩に手をやった。 歓迎会の時、 『誰かかっこいい人いた?』 とか皆が聞いてきた。 香那美はその時も大げさなくらい社内恋愛は嫌だし興味がないとアピールしたのだ。 「面倒だもんなぁ・・・」 洋介は『面倒』という言葉が口癖のようだ。 出会ってまだいくらも経たないのにこの言葉を何回聞いたことか。 面倒くさいことが心底嫌なんだろう。
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