星は輝きを求めて

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「ルユーナ!!」 自分を呼ぶ声に少女は振り返った。 おさげの髪は手櫛では直らないほどボサボサで、色も枯れ葉のような醜い焦げ茶色。 鼻の上にはみすぼらしいソバカス。 安物の眼鏡に、着ているものは継ぎ接ぎだらけのワンピース。 あまりの冴えない姿に、印象にも残らない田舎の少女だ。 少女の名はルユーナ。 両親はルユーナが小さな頃に亡くなっており、レステ村で一人暮らしをしている。 あまりにも幼かった為、ルユーナには両親の記憶は全く無い。 そのおかげといっても良いのか、彼女は一人なのを苦にすることなく今まで暮らしてこれた。 ルユーナは、呼んだ人物を黄土色の瞳で見つめた。 「アラマート?」 アラマートはルユーナに大きく手を振り、こちらにやって来た。 黒く短い髪が右へ左へと小刻みに揺れている。 元気な緑の瞳が、ルユーナの田舎臭い顔を映した。 水晶体に写る姿に、ルユーナは思わず目を反らす。 ……この顔は、正直嫌いだ。 リュンヌ国の姫ペスカは、流れる黒髪に透き通る菫色の瞳を持った、それはそれは美しい女性だという噂だ。 見たことがないのであくまでも噂しか知らないが、王族の姫だ。誰もが振り返る美姫に違いない。それに比べ、自分は綺麗な所などどこにもなく、煤けた服がよく似合う地味な存在だ。 女として生まれたならば、誰よりも美しい、綺麗な女性になりたい。 無い物ねだりだとわかっていても、水に映った姿を見る度に泣きたくなってくる。
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