113人が本棚に入れています
本棚に追加
「ルユーナ!!」
自分を呼ぶ声に少女は振り返った。
おさげの髪は手櫛では直らないほどボサボサで、色も枯れ葉のような醜い焦げ茶色。
鼻の上にはみすぼらしいソバカス。
安物の眼鏡に、着ているものは継ぎ接ぎだらけのワンピース。
あまりの冴えない姿に、印象にも残らない田舎の少女だ。
少女の名はルユーナ。
両親はルユーナが小さな頃に亡くなっており、レステ村で一人暮らしをしている。
あまりにも幼かった為、ルユーナには両親の記憶は全く無い。
そのおかげといっても良いのか、彼女は一人なのを苦にすることなく今まで暮らしてこれた。
ルユーナは、呼んだ人物を黄土色の瞳で見つめた。
「アラマート?」
アラマートはルユーナに大きく手を振り、こちらにやって来た。
黒く短い髪が右へ左へと小刻みに揺れている。
元気な緑の瞳が、ルユーナの田舎臭い顔を映した。
水晶体に写る姿に、ルユーナは思わず目を反らす。
……この顔は、正直嫌いだ。
リュンヌ国の姫ペスカは、流れる黒髪に透き通る菫色の瞳を持った、それはそれは美しい女性だという噂だ。
見たことがないのであくまでも噂しか知らないが、王族の姫だ。誰もが振り返る美姫に違いない。それに比べ、自分は綺麗な所などどこにもなく、煤けた服がよく似合う地味な存在だ。
女として生まれたならば、誰よりも美しい、綺麗な女性になりたい。
無い物ねだりだとわかっていても、水に映った姿を見る度に泣きたくなってくる。
最初のコメントを投稿しよう!