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掃除
「あーあ……またかぁ……」
彼女はがっくりとうなだれて呟いた。
「うぅ……」
現在居るのは、僕の練習部屋。練習に夢中でろくに片付けていないので、凄まじいことになっていた。
「1週間前に掃除したばかりでしょ……?」
恨めしそうな視線。彼女の目を直視できないので多少視線をずらしてごめんと呟く。
「はぁ~……ホラ片付けるよ」
床に散らばった教本に空の缶やペットボトル。それをテキパキと片付けて行く彼女。
手際が良すぎて手伝う暇すらない。
「全くさぁ……」
愚痴が来るぞ……
「練習するのは良いけどさ、きちんと整理整頓位はしてよねぇ……折角楽器上手いんだからなんか勿体ないよ」
何時もよりも柔らかい物腰で言う彼女。なんだろうか。
「うん、ごめん」
「謝っとけば良いって訳じゃないよ~?私だから許すんだからね?」
1.5Lのペットボトルを僕に突き付け、不敵に笑う。
「ありがとうね」
片付けてくれて。
にっこりと笑ってお礼を言うと、彼女は顔を真っ赤にして逃げる様に作業を始めた。
「…………うん」
長い沈黙の後の返事。
そんな彼女の表情と仕草は、僕の心を綺麗に掃除してくれる。
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