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半分
「やっと手に入れたね……」
やや疲れた表情で言う彼女。手には小さな紙袋が1つ。
「何故メロンパンを買いに来ただけでこんなに疲労感が……」
僕と彼女は最近テレビでよく紹介されているパン屋のメロンパンを入手するために、わざわざ電車を乗り継いでやって来た。
そして、多大な費用と苦労を費やして手に入れた人気店のメロンパンは、
「でも、1個しか買えなかったね」
そう1個。
「まぁ、人気店のだから仕方ないさ。手に入っただけでも僥倖だよ。君が食べると良い」
と、全て譲る発言を。僕も彼女もメロンパンが大好きで、正直僕も食べたいが……仕方ない。
「いいの?」
彼女は僕がメロンパン好きなのを知っているので、何度も何度も聞き返してきた。
僕は後ろ髪を引かれつつも肯定の意を表し、近くのベンチに陣取り、彼女を隣に座らせた。
彼女はガサゴソと紙袋を漁り、こんがりと良い色に焼けたメロンパンを取り出した。
「おいしそ~!」
物凄い勢いでがっつく彼女。笑顔で。
半分程食べた所で彼女は徐にメロンパンを僕の口に捩込んだ。
「半分こ、ね?ほんとすっごい食べたそうな顔してるんだもん……」
彼女はにっこりと笑って言った。
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