卒業

1/2
前へ
/20ページ
次へ

卒業

3月。温暖化の影響か、上旬にも関わらず桜は満開、そんな中を僕と彼女は歩いていた。 「はぁ~卒業しちゃったなぁ……」 そう、僕達は本日高等教育の課程を卒業した訳です。 「そうだね」 花弁を散らす桜を見上げながら返した。 「にしても吹奏楽部、退場のときに泣きまくって演奏になってなかったね」 彼女はくすくすと笑いながら言った。我が校の卒業式では、入場と退場のBGMを吹奏楽部が演奏することになっていて、退場の時は部員の殆どが大号泣で曲に成ってなかった。ただ―― 「素人さんには分からないさ」 僕達が吹奏楽部員だったから分かっただけだが。 「……埼玉行っても宜しくね」 彼女はいきなりそんな事を言った。僕と彼女は埼玉の大学に進学を決めている。 「こちらこそ」 双方の家族公認の恋仲で親同士も仲が良いため、埼玉で彼女と同棲することになったのだ。 「という訳で」 彼女は徐に右手を差し出して来た。 「はい」 僕はその右手をしっかりと握る。絶対に離さないように。卒業して、高校という鎖が無くなったからこそ。しっかりと僕が守る。 「でも…………変なことは……あんまりしないで……ね?」 頬を朱に染めて彼女が言った。 僕の答えは―― 「善処します」 …………嗚呼、情けない。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加