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約束
春。天気は快晴で気温もやや高い。
僕と彼女は、花見に来ていた。
「やーっと約束守ってくれたね!」
彼女は、食事が入ったバスケットを両手で抱えて僕の隣で嫌味を言ってくる。
それもその筈。僕達は音楽大学に進学したのだが、僕は器楽学科で、彼女は音楽学学科。決定的に僕の方が忙しかった。埼玉に来てすぐに花見に行く約束をしていたのだが、中々時間が無かったのだ。
友人に明日の昼食と引き換えに代返とノートを頼んで、何とかサボり、今に至る。
「本当に申し訳ない。授業やらレッスンやらで中々忙しくて」
頭を掻きながらレジャーシートを抱えて歩く僕。
「まぁ、最終的に約束守ってくれたから良いんだけどさ」
彼女はとても嬉しそうに微笑む。しかし、実は約束は此れだけでは無い。後で至上最大の難関が待ち受けているのだ。
丁度良い場所を見つけ、レジャーシートを広げ、バスケットの中からサンドイッチその他諸々を取り出した。
そして、僕は頃合いを見計らって約束を実行する。
彼女を抱きしめ、キスをする。人目もあるのにも関わらず。
「えへへ~」
彼女は嬉しそうに微笑んでいる。
嗚呼恥ずかしかった。
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