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「ねぇ、糸って分かる?」 僕が珈琲を飲みながら読書をしていると、彼女は酷く真剣な顔で聞いてきた。 「糸?あぁ、繊維を細長くより合わせて作ったものだね」 彼女は僕の隣に座って、珈琲の入ったマグカップを奪い取る。 「そそ、じゃぁ赤い糸って分かる?」 一瞬携帯小説の題名が浮かんだが、彼女の言う赤い糸は違うようなので破棄。そういえばこの前読んだ本に―― 「いつか結ばれる男と女は、足首を見えない赤い縄で結ばれているとされる。って奴だね」 どこぞの宗教本を読んだ時に覚えた内容だ。 「縄じゃないって」 彼女は不服そうな表情を浮かべて指摘してくる。まぁ、確かに彼女が言ったのは糸なんだけども。 「日本では足首の赤い縄から手の小指の赤い糸へと変わってるんだよ」 彼女はまるで興味なさ気な表情で珈琲を啜る。猫舌な彼女には少々熱いと思うが。 「で、その赤い糸がどうしたんだい?」 「え?」 まさかそんな事を聞かれると思っていなかった、といった表情の彼女。 「……全く鈍いなぁ、一々言わないよ」 彼女はくすりと笑い、ソファに身を沈めた。 僕は首を傾げつつも、正解を導き出せなかったので、本に目を落とし、読書を再開した。
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