コーヒー

4/6
前へ
/6ページ
次へ
いつから好きな人ができたの? いつから私のことを 頭の片隅に追いやったの? いつから二人は すれ違ってしまったの? 聞きたいことは 沢山あった。 けれど 聞けなかったのは 4年間で少しずつ広がっていった 二人の隙間のせい。 携帯を閉じると チカチカと 時計が点滅している。 もうすぐ記念日だね、 なんて話もしばらくしていなかった。 別れなければいけなかったのに それすらも後回しにしてきた。 もう彼は 好きになった女の人と 一緒にいるのだろうか それももう聞けない。 あぁ、 テーブルを拭かないと。 フラリと立ち上がり、 キッチンからふきんを持ってくる。 白い、エナメル塗装のしてある テーブルを力なく拭くと 暗闇の中、 右手薬指にキラリと指輪が光った。 彼が初給料で買ってくれた 指輪だった。 これを買ったときに 二人で笑った。 嬉しい、 なんて言って 笑った。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

27人が本棚に入れています
本棚に追加