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「イヤ。絶対無理」  私はほとんど反射的に言った。 ゆう君は口を尖らせて子どもっぽく不満をもらす。 「何でさ」 「無理ったら無理。ありえない」 「だからどうしてだよ」 「心が動かないわ。 ゆう君は大事な友達だけど、そういう気持ちはもう死んでしまったから」  本当だった。 亨がいなくなってから、誰かに惹かれるとか、浮立つような気持ちが消えてしまっていた。 私の心はこのまま石のように冷たく堅くなって、そのうちには終わりが来ることを待つようになる気がしていた。 きっとそうなればもう辛くはないだろう。 「誰が相手でも駄目?」 「そう」 「毎日口説いても?」 「無理ね」 「毎日『愛してるよ』って言っても心が動かない?」 「当然。いま言ったじゃない」
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