スケート

2/16
前へ
/28ページ
次へ
退屈な古文の授業が、もうすぐ終わろうとしていた。ただでさえ古文の先生のお経のような口調は、眠気を誘っているかのように気だるい。 12月半ばの土曜日の4時間目。今週はテストもあったから余計に疲れていた。これさえ終わればやっと休みになる。 《あと5分なのに…やたらと長く感じるな…》 窓際の席にいた高田哲也は、ふと窓の外を見下ろした。そこは白一色の原野。グラウンドとその周りに広がるはずの田んぼが、全て雪で境目なく覆われていて、一面真っ白な世界が広がっている。 俺の住むこの街は、11月の半ばから3月までこうして雪で覆われる。 遠くに目を向けると、久しぶりの晴天のおかげで正三角形の雪山が綺麗に映えている。小学生の頃はよく父親が連れて行ってくれたスキー場だ。 《懐かしいな…忙しいお父さんだけど、小学生の頃は必ず海とスキーには連れて行ってくれたな…》 今では全くウィンタースポーツなんてやらない。授業で仕方なくスキーをやるくらいだ。 《はぁ~…今日は街中でラーメンでも食べて、ちょこっとゲーセンにでも寄って帰ろうかな》 俺の思考は、これからの土曜の午後の過ごし方でいっぱいだった。 ♪キーンコーンカーンコーン 終わりを告げる鐘が鳴った。古文の先生が出て行くと、入れ替わるように担任の体育の先生が入ってきた。 「え~、今週やったテストのクラス平均点がかなり良くないぞ!!」 ガヤガヤしていたクラスが一瞬にして静まり返った。いつもうるさくしてるのは、俺をいじめてくる野郎ばかり。そのリーダー格の男子が茶化すように言い放った。 「俺ら男子が足引っ張ってるんでしょ?みんなバカばっかりだからなぁ~」 「ワハハ!」 クラスに笑いが起きた。 《男子って限定して言うなよな!お前らが勉強しないからだろ!!》 いじめられている腹いせは、こうやって心の中ではらすしかない。腕力や仲間の頭数では到底敵わないからだ。 「まぁとにかくだな、この前も話した通り、これからの成績が来年2年生のクラス編成に関わっていくからな。以上!」
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!

211人が本棚に入れています
本棚に追加