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《な、なんで保科さんほどの美少女が俺なんかに!?》
よくよく話を聞くと、ただの部員集めだった。サッカー部を辞めたばかりの俺なら、まだ他の部活にも所属してないだろうから勧誘してみたらしい。
《なぁんだ…やっぱりな。まさかって思ったけど、ありえないよな。こんな美少女と俺がどうにかなるだなんて…》
妙に納得した俺は、この美少女の誘いをきっぱりと断った。第一ボランティアなんかに全く興味はなかったし、こんな美少女を好きになっても失恋するのがオチ。淡い期待すら持たない方がいいと思った。
でもそんな俺の気持ちを動かしたのは、部活で行く夏休みの北海道キャンプへの魅力だけじゃなかった。
『ねぇ高田君…どう?』
くりくりとした目が、さらにまん丸になって俺を見つめてくる。その上目遣いの瞳に、誰だって吸い込まれそうになる。こんなかわいい表情で迫られると、首を縦に振らざるを得なかった。
『やったー!ほんとにいいの!?』
俺は、自分が予想だにしなかったボランティア部に入ることになってしまった。
『じゃぁ、また明日ね!バイバイ高田君!』
次の日から保科さんは、毎日毎時間のように俺の席に来ては雑談をするようになった。彼女はそれまでのイメージとは裏腹に、とても人懐っこく、お喋りだった。もともと男の癖に口数の多い俺と、ものすごく意気投合した。
その結果、俺はクラスのほとんどの男子連中を敵に回すことになった。つまりいじめの対象となってしまったんだ。
美少女と仲良くなった俺の高校ライフは、バラ色になるどころか、逆に灰色になってしまった。俺は自分の運のなさを呪っていた。
でも…
《保科さんってやっぱりかわいいなぁ…あっ、いけないいけない…》
保科さんを見るとつい浮かんでしまう『ある想い』を、慌てて心の奥底に眠らせた。
《眠れ…起きてくるなよ…どうせこの想いが報われる日なんてくることがないのだから》
そんな俺の心の動きに気づくはずもない保科さんは、空いていた俺の前のイスに腰掛け、俺の机に頬杖をついてこう言った。
「あのねっ!これからスケート行かない?」
「はぁっ!?」
それはあまりにも突然の誘いだった。
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