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ふと俺の周りを見ると、親友の小野と、保科さんと仲良しの溝端志保さんが立っていた。
「私も初めてなの。でも興味はあったから楽しみだわ!」
そう言う溝端さんは、保科さんよりももっと背の高い子だ。決して美人ではないが、とてもしっかり屋さんの女の子だ。よく保科さんと一緒にいるから、周囲は保科さんの引き立て役として見ていたが、本人はそんなことは全く気にしていない風だった。
「ま、私の勘だと咲ちゃんと高田君は滑れそうね。でも小野君と私はきっとダメそう」
「お…俺ダメなのかよ…」
滑ってもないのにダメだしされた小野はガッカリしていた。
…普通は言いにくいようなことをズバズバ言えるのも、溝端さんならではだった。
《でもな…正直スケートに興味はないんだよな…絶対転びそうだし…》
すると小野が俺の肩を叩きながら小声でこう言った。
「ちょうど2対2でちょうどいいじゃん。ね?」
「おいおい…何言ってるんだよ!!お前、年下の彼女いるだろ?」
小野には一つ年下の彼女がいた。顔はかわいいのだが、性格は凶暴と言えた。
「そんなの気にしない気にしない気にしない!!」
「どんだけ気にしてないんだよっ!!」
《小野め…もうすぐクリスマスだというのに彼女と何かあったな?》
なかなか了承しない俺に業を煮やしたのか、保科さんはこんなことを言った。
「もぉ~しょうがないな…じゃあ、ジュースおごってあげるから。だから行こうよ!ねっ?ねっ?」
《ドキッ…まずい…このパターンは…》
俺は…
俺は…
《この上目遣いで迫られると俺は…》
「う、うん…わかったよ」
あっさり落ちた。
「ほんとぉ!やったぁ!」
目の前で、保科さんの笑顔が咲いた。
「なんだよ。モノで釣られやがって!」
《違うよ…小野。そうじゃないよ。俺は…》
決してジュースをおごってもらえるからじゃない。
《あんな瞳で迫られたら、断れるわけないじゃないか…》
俺を一生懸命に誘う保科さんが、あまりにも可愛かったから…
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