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「拓哉おきなさ…起きてたの」
「起きるよ流石に…中学受験は俺が希望したんだ」
『中学受験』
それは言ってしまえばエリートコースを走るための道標である。
しかし、その門は激しく厳しい物である。
ただ賢いだけでは通らない。
常識を問われる問題も出題され、面接も存在する。
八十名という狭き門に俺は実力と自信をもって立ち向かうことをきめた。
両親は何も言わなかった。
だけど、俺は自分に自信があった。
小学校の教科書は面白くなかったから小五のときには中学生で習う勉強をテレビで独学していた。
気がつけば高校生が解くような問題に手を出しかけていた。
母さんは俺をみて哀れんだ目で見てたけどなんか勉強は楽しかった。
自分の知らない事が沢山あって、次々わかった。
テレビの勉強って、案外教師よりわかりやすく説明してくれるから頭に吸収されていく。
「母さんこそ面接大丈夫なの?」
「自信ないわね…」
基本的に両親ありきの面接のため俺より両親の方が緊張していたのだ。
「それにまだ時間あるから」
「そうね…手の掛からない子供をもって母さん寂しい…」
母さん…子供の前で言うのはよそうか…。
「二人とも何やってる…朝食さめるぞ」
声が軽く震えた父さんがやってきた。
「わかった。おりるよ。母さん落ち着いて。父さんも緊張しすぎ」
「わ、わかってる~」
ダメだ…緊張しすぎて声が裏がえってるよ…。
「賢い子は良いわね~」
春休みで呑気な姉さんが顔をだしてきた。
「姉さん。嫌みいいにきたの?」
「酷いわ~私そんな腹の黒い女じゃないしぃ」
充分黒いよ…顔が…。
「あんたまた黒くしたの!?」
「い~じゃんほっといてよ。バイト代の使い道なんて私の勝手でしょっ!どうせ私はバカなんだから」
色白で綺麗な姉さんはいつの間にか顔黒ギャルに変貌をとげ高校へ通っている。
論理上は間違ってないから親もそれ以上いえない。
「姉さんは白い方が可愛かったよ…」
「弟に誉められたって嬉しくないわ」
そういってさっていった。
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