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「ダランか。あんなに大掛かりに捜すってことは、フォール家の息子さんってわけだな」
「……なるほど」
…フォール。世界各地にある冒険者ギルドを創設した偉大な家系。中々の金持ちの家みたいだが…そこから家出か。まぁ、分からないでもないが。
「御礼とか貰えたりして?」
「…貰えるんじゃないのか? 確か一人息子だろ?」
昔聞いた話では、確か一人息子のはずだ。普通なら子供は大事にするものだ。一人息子なら尚更。
「案外アルガードで見付かったりして」
んなわけないか、と笑いながらそう言ったルーツ。…この世界、そう簡単にはいかないようになっているものだ。
まず、見付かることはないだろう、と俺も思いながら再び俺達は歩き出した。
「……あのさ」
「……ん…」
辺りは暗くなった頃、ようやくアルガードに着いた俺とルーツは、ただ呆然と“ある一点”を眺めていた。
「……もしかして、あれじゃね?」
「………」
民家の裏から顔だけ覗かせ、キョロキョロと周りを窺っている黒の鳥人。
『ちょっと不審な行動した黒鳥人を見かけたら、どうにかしてダランまで連れて来てくれないか?』
……“ちょっと”どころじゃない。明らかに怪し過ぎるだろ…!
「捕まえようぜ!!」
「……あのな…」
お構いなしにずんずんと近づいていくルーツ。…捕まえてどうするつもりなんだ…。無理矢理ダランにまで連れていくつもりか……?
「…な、なんだよ……」
近づいてきた俺とルーツに不審な目を向ける鴉……おそらく、ネロ・フォール。
「あんたさ、ネロ・フォールだろ? 親父さんが捜してたぜ?」
「―――!? マジか!? どこでだ!!」
驚きの表情の後、ルーツに縋り付くネロ。そこでがっしりとネロの両脇から手を入れ、ネロの体を掴んだルーツ。
「俺達さ、見付けたら強引にでもダランに連れて来い、て頼まれてるんだよなぁ~」
「―――っ!! 離せっ!!」
必死にもがいているが、がっしりと掴まれた状態から抜け出せるわけなかった。
「俺は帰らねぇ!! 離せよ!!」
「あ~落ち着けって。俺達はお前を連れてこうとは思ってねぇよ!」
「……?」
ルーツの言葉を聞いて、ぱっと大人しくなるネロ。…連れてかないのなら、一体どうするつもりなんだ?
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