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「……何があった」
俺は虎獣人の質問に答えることが出来ず、問い掛けは無視した。虎獣人は質問に答えなかった事はあまり気にしていないみたいだ。
「……ここを通り掛かったら、こいつらが魔物に、襲われてて、なんとか追っ払ったんだが、頭に傷を……」
「大体は分かった。…見捨てるわけにもいかない。近くの村まで連れていってやる」
俺はそう言って虎獣人の肩を担いだ。
「待て…っ!!」
虎獣人が頭の痛みに呻きながらも、俺に待ったを掛ける。
「…なんだ」
「あいつが、戻ってくるかも、しれねぇ。そしたら、こいつらが…」
「馬鹿かお前は! …こいつらはワイルドラッド、魔物だ。放っておけ」
俺はそう言って虎獣人の肩を担いで歩きだした。……が、突然虎獣人が俺から離れた。
「…俺だけ、でも…」
「…魔物に情けをかけて何になる。お前には関係ない事だろう」
頭からの出血が収まらない状態の虎獣人を睨みながら俺はそう言った。虎獣人も俺を睨んでいる。
「…あいつらだって、生き物だ…! 倒すのは、襲い掛かる魔物だけで、いいんだ…!」
「………」
俺は虎獣人の真っすぐな目に、何も言えなかった。……その時
「ギュ~~!!」
「「―――っ!!」」
ワイルドラッドの鳴き声が聞こえた。ワイルドラッドのいる場所を見ると、中型の魔物、サイクロプスがいた。種類にもよるが、あれはおそらくBランクのサイクロプスだ。
「…俺、が…」
「………」
近くの木に手を付きながら歩く虎獣人。……正直、何故そこまでしてやれるか分からない。分からないが…
「俺がやる。そこで待っていろ」
何故か俺は、剣を構えて走り出していた。
「グォォォ!!」
サイクロプスは素手で、逃げ惑うワイルドラッド達を薙ぎ払っていた。既に重傷のワイルドラッドが多数出ている。
「はあぁぁっ!!」
俺はサイクロプスの右肩を剣で切り付けた。が、硬い筋肉が遮って、ほんの少ししか傷を負わせられなかった。
「グォォッ!!」
「くっ…!!」
俺の存在に気付いたサイクロプスが、俺に攻撃を仕掛けてくる。俺はバックステップで攻撃を避けた。……どうする。剣では攻撃しても意味が無い。かといって血識はあまり使い慣れてない。避けながらでは到底……
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