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「……俺が、あんな意地張ってワイルドラッド達を助けようとしなけりゃ、ドルクは傷付く事無かった…。俺のせいだ…」
「………」
今にも泣きそうな声でそう言うルーツ。……何故コイツは、こんなにも他人の事を考えるのだろうか。…それとも、俺だけなのか? こんなにも他人に無関心なのは……。
「……っ!? お、おい、ドルク!?」
…でも何故だろう。他人に無関心な俺が、コイツは俺が守ってやりたいと思ってしまったのは…。
俺は無意識の内にルーツを抱きしめていた。俺の首元から困惑した声が上がる。
「……お前なら…」
「……ん?」
俺は、蚊の鳴くような声で呟いた。
「…お前なら、俺を変えてくれるかもしれないな…」
…今までの俺を、ルーツが変えてくれる。そんな気がした。
「……突然すまないな。気にしないでくれ」
俺はそう言ってルーツを解放した。……今更ながら、俺はなんて恥ずかしいことをしたんだ…。
「……あのさ、ドルクに聞きたいことあんだけど…」
「なんだ?」
ルーツが気まずそうにそう言った。……感づかれたか…? いや、ルーツが“ゼクリア出身”でなければ分かるはずない。だが、もしもゼクリア出身なら…。
「……もしかして、男が好きなのか?」
「…………どうだろうな。考えたことも無かったが、そうなのかも知れないな」
……心配して損した。それもそうだ、ルーツが分かるはずがない。“持ち金の量と獅子獣人”というだけで分かるはずがない。
「そうかそうか。だがな、ドルク。俺には可愛い可愛い弟がいるんだ。そりゃあ、お前から抱き着かれちゃあドキッとするぞ? それでもな?―――」
「……勝手にやってろ。俺はもう寝るぞ」
俺は長々と話をするルーツを無視して、ベッドに横たわった。……久しぶりの疲労のせいか。すぐに眠気が襲ってくる。
眠る寸前に聞いたのは、『…人の話は最後まで聞くもんだぞ?』というルーツの声だった。
「………ん、もう朝か…」
目が覚めると、窓から明るい光が差し込んで来ていた。俺は起き上がり、周りを見る。
「……? ルーツ?」
ルーツがいなかった。…もう起きたのだろうか。
俺はボサボサになっている鬣をどうにか直して、部屋を出た。
「お~い、ドルク~!!」
俺を呼ぶ声が聞こえた。声がした方を向いてみると、食堂からルーツが手招きしていた。……恥ずかしい。
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