11人が本棚に入れています
本棚に追加
と同時に、解放されたかったのだ。同情や、憐れみ、善意だけど押しつけられる優しさ…
不完全な肉体、世の中の流れから、置き去りにされたような不安感…
そんなしがらみから、すべて解き放たれる場所が、今はこの、手の中の小さな携帯の中に存在した。
その後も、ヤットちゃんとの交友は更に増し、昼夜問わず、連絡を密にしていった。
リリカのレベルが50になる頃には、ギルドのメンバーにもずいぶん馴れ、インするたびにドキドキすることもなくなってきた。
今日もやはり寝不足だか、夜中に目が覚めた。
「今日も張り切っていこー!」
元気な病人だ。
実際、外科手術後や、重度の症状を抱えていない病人は、気力があれば元気なのだ。
ただ、ひたすら長い抜けないトンネルを、ゆっくりと1人で歩いているような感覚は、だんだんと精神を蝕んでいく。
りりかにとって、この新しい場所と、新しく知り合った人々は、暗かったトンネルに差し込む光のような存在だった。
暗闇に住むりりかにとって、光は憧れであり、触れると心が癒やされるのだ。
りりかが心から求めて止まないものが、ゲームの中にあった。
いつも通りギルドへの挨拶を済ませると、リリカは街の雑貨屋で、狩りに必要な道具を揃えていた。
と、突然、何の前ふりもなくギル茶が聞こえた。
「りりか♪?今、何してる?」
77さんからの突然のギル茶だった。
「えーと、今からワカ狩りに行こうかなあと…」
「手伝うよ」
予想もしていない申し出だった。
「ホントですかー!ありがとうございますー!」
77さんは、いわゆるギルドの人気者で、77さんがギルドに来るとギル茶が湧いた。
リリカは、未だ、間接的にしか77さんとは会話したことがなかったので、「いつも忙しそうな人」としか認識していなかった。
どういう気まぐれかわからないが、深夜1時を過ぎたこの時間、野良パテが苦手なリリカにとっては、願ってもない申し入れだった。
狩りは、パーティーでやる方が効率的なことに、遅ればせながらりりかも気づいていたのだ。
深夜ともなると、インしてる知り合いも少ないため(知り合い自体少ないが😅)いわゆる野良、即席で、その場限りのパーティーを組むことがよくある。
りりかはこれが苦手だった。
夜中のワカ狩りは静かだった。待ち合わせの街でパーティーを組むと、リリカは77さんと狩場に向かった。
最初のコメントを投稿しよう!