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ピッポッパッっとボタンを押すたびに、軽快に鳴り響くプッシュ音だけが午後の病室の静けさを感じさせた。
「りりか?横になってていいぞ」
ちらりと純一を見やるとりりかは口を尖らせて、
「病気だけど元気よ」
とつぶやいた。強がりはいつものことだ。
「えぇから寝とけ」
愛想のない言葉だが、りりかにはちゃんと気持ちが届いたようだ。素直に横になった。目は携帯だったが…。
「よし。これでゲームまでできるな」
すべての設定を終えた純一は、横になったままのりりかに見えるように、ベッドの脇にしゃがみ込んで説明した。
「佐伯さーん検温です」
忙しそうな看護士が慣れた様子でりりかとやり取りをしている。
「さて、そろそろ帰るわ」
いつものように、りりかが少し寂しそうな顔をする。この顔に実は弱い。
「また来るから」
「わかった。ありがとう純くん。また待ってる」
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