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あの日以来、渉様はいらしてくれない。
水揚げされたけど、評判の悪い俺に客がつくわけもなくて…。
あの簪を眺める日が続いてる。
普通なら手紙を出したりするだろうけど、迷惑になりそうで出せないまま…。
まだ禿をしていた頃、姐さんが話してくれた。
この街の桜は願いを叶えてくれるって。
本当に願えば叶うのかな?
来るか分からない人を待つのは、苦しいだけなのに…。
姐さんからいただいた、桜の着物を着てみる。
俺に似合うって贈ってくれた、夜桜の着物―。
「桜、お客様だ」
桜「はい」
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