浮遊地獄

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――--今日も、僕は、 息を吸っている。 まぶたを、薄く、閉じて、また、開く。 ゆっくりと、開く。 ゆっくりっていうのは、なんか、静かに開く、みたいな感じ。 足音が聞こえる。 僕は、音を聞くことができる。 部屋に、入ってくる、君。 多分、彼も、音を聞くことができる。 僕は彼を見ることができる。 彼も僕を見ることができる。 目が、見えるから。 僕は、彼の心が、読める。 でも、彼は、僕の心が、読めない。  ど う し て ? 彼が、近寄ったから、僕は、彼に触れてみた。 トクン、トクン、と、心臓の音。 ゆっくり、だったのに、僕が、目を合わせたら、彼の脈は、はやくなる。 "おはよう" 僕は心で、伝えてみる。 "おはよう" 彼も、心で、伝えてくれた。のかな? 本当は、心なんて、読めないのだけど。 .
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