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「なんで、食べてくれないの」
パンや果物の入ったトレーを俺に差し出すミノを見上げ、「いらない」と一言言うと、ミノは溜め息をついて、パンを一かじりした。
(おれの、夕飯なのに、ミノが、たべた、)
ミノは「キボム、」と名前を呼び、俺の顎を掴んだ。
「…ちゅー?」
俺がミノに上目遣いをすると、ミノがフフっと笑って、口づけをしてきた。
(やっぱり、ちゅー、だ)
緩く口を開くと、ミノが噛んでフニャフニャになったパンが、口の中へ広がった。
「んむ、…ゃだ、ぁ」
「飲み込んで」
久々に食べ物を口へ入れたから、気持ち悪くなって目眩がした。
「ん、ぐ……」
ミノが机の上の水をごくっと飲んで、また俺の口に運ぶ。
「吐き出しちゃだめ、飲み込んで」
ミノが優しく言うものだから、どきりと胸が高鳴る。
「ん、ん、む……はぁ、」
俺が飲み込んだのを確認すると、ミノは俺の口からあふれた唾液をペロリと舐めとった。
「痩せたら嫌いになるからね」
そう言って、トレーを机に置き、ミノは部屋から出て行った。
俺は、1人ベッドに倒れ込み、自分の腕を、見つめた。
(ほそい、…でも、テミナはもっと、ほそい)
別に痩せたい訳では無かったのだけど。
ミノが、テミナと一緒にいるから。
ミノが、テミナの腕をみて、「ほそい」なんて、いうから。
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