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「ん、ぐ、う」
まさか、怒ってるだなんて知らなくて。
「ミノ、いたい、手、いたい、」
踏みつけられた手。
「なに、その口の聞き方」
(そんな、目、で、俺を見ないで)
「ごめん、なさい、」
ぐず、っと鼻を啜ると、ミノはちっ、と舌打ちをして、足をどかした。
(真っ赤、に、腫れ上がって、指、動かせない。)
「顔は、傷つけないから、大丈夫だよ」
にこりと笑うものだから、恐怖は、消えたのだけど。一瞬、だけ。
「声は、出さないでね」
顔は良くても、身体は傷つけられるのだから。
安心、だなんて、そんな言葉は、ない。
ミノの蹴りが、
お腹に、入って。
きゅ、と目を瞑る
「っ………」
唇を、かむ。
また、一発、
また、一発、
「っ、ぅ……っ」
辛くて、内臓が出てきそうな勢いで、涙がぽろぽろと流れて。
「ねぇ、キボム、」
突然動きが止まるものだから、びっくりして、うっすらとまぶたを開いてみる。
「なんで、こんなことされて、我慢してるの?」
(嗚呼、また、ミノが、へんになっちゃう)
「ミ、ノ」
「キボム、ってさぁ、頭、おかしいの?」
(嗚呼、確かに、おかしいのかも)
ミノは、黙ったままの俺に、不機嫌そうな顔をみせて。
俺の上へまたがるようにして、立った。
それから、俺の服を指で摘むようにめくった。
「キボム、痣、すごいね」
(自分が、つけたくせに)
ミノは、背中の俺の痣を、ぐっ、と押した。
「ぁうっ、…い、たい」
「声、出すなって言ったろ」
「だけど、いたい、やめて、お願い」
痣、出来たばかりの、痣。
ミノは、俺に傷をつけたいだけなのかも。
恋だと思ってたのは、俺だけだったのかも。
「ぅあ、いたい、よ、ミノ…っ」
(心臓が、いたい)
「うん、なんかね、俺もいたい」
(どうして?)
「キボムが、泣いてるから」
(意味が、わからない)
「こんなことしてるのに、キボムが泣くと、苦しいや」
俺は、いつの間にか気絶していて、目が開くと、腫れた腕には、湿布が貼ってあって、ひんやりと、冷たくて。
でも、なにより痛いのは、心臓につくられた、痣だった。
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