呼吸

2/17
前へ
/19ページ
次へ
「で?連れ帰ったわけだ 自分の部屋に…… ック……け、傑作」 今にも吹き出してしまいそうな、黒くて長い髪をした青年は そんなことを言いながら、吹き出してしまう前に椅子ごと蹴り飛ばされてしまった。 壁に頭を打ち付け「あごぁっ」と無様な声をあげながら壁に寄りかかる形で崩れ落ちる。 「いってーな!何すんだ糞アラン!」 「次に笑ったら、跡形も無いくらい吹き飛ばすぞダイク……」 アランと呼ばれる若者は、細身の体に低めの声 髪は、夕日に照らされる海のような赤で 右半分は乱雑に切られ、左半分は肩にかかるほど長く、アシンメトリー愛好家かと思わせるようなまばら頭をしている。 その頭をやや下げて、怒りに震えていた。 「おいコラァ ちったぁ静かにしやがれ! 客はテメェ等だけじゃねーんだぞ!」 二人のいる室内……というよりは店内だが、バーと呼ぶには少々地味な風貌で、少しホコリをかぶった棚には乱雑に酒のボトルが並べてある。 タバコと酒の臭いのする店内に似合う「オレは荒くれだ!」と、姿だけで語る大男が、グラスが割れてしまいそうな大声で叫ぶ。 「おめーもうるせぇだろうがバカヤロー!」 ダイクと呼ばれる青年は、その荒くれに食って掛かる。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加