それぞれの情事

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「おはようございます!今日からお世話になります!椿誠二です!」 朝から元気一杯に挨拶をするオレ。仕事始めってのはこんなもんだろ。 そうなんだ、今日からついに社会人デビューだ。昨日は緊張しまくりだった。もちろん今日出勤している時にもそわそわしていた。 職場まではバスで通う。時間は一時間弱くらいかかるかな。めぐの愛妻弁当を片手に出勤だ。 柳ヶ浦町よりも市街地に近い黒岩町の街は賑わいを見せている。 その黒岩町に去年オープンしたショッピングモールの中にある楽器店のスタッフとして就職したんだ。 店内にはいろんな楽器が所狭しと並べられている。ギターやベースにドラム、キーボード。管弦楽器にタンバリンなんかも。 「改めてよろしく、椿くん。面接の時に話したけど、僕が店長を任されている花澤だ。みんな、自己紹介を」 今話したのが店長の花澤真一さん。身長は180くらいあるだろうか、オレも見上げる程背が高い。 歳は36。既婚者で子供も二人いるらしい。その割に若く見えて、あごヒゲを綺麗に整えていた。 話すと優しい感じなんだが、ぱっと見た感じはコワモテのお兄さんだ。
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