それぞれの情事

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「どうだい!見たかね?元気よく!笑顔で!丁寧に!わかったかい?後輩よ」 「はぁ…」 不安。 早くものしかかる重圧。 簡単だ。基本だ。自分に言い聞かせる。 「そーんなに考えなくてもいいんだよ?笑顔でいれば少しくらいミスってもいいってもんさー!」 …この人も最初はオレみたいな感じだったんだろうか?この感じからは想像すら出来ないけどな。いつも笑ってるみたいだから。 「あの、園田先輩も最初はオレみたいだったんですか?」 「私?もっちろんさー!いやー、あの頃は苦労したぜ?毎日仕事に来るのが嫌だったさねー」 「へー、全然そんなふうには見えないですけど」 「まー、同じ仕事じゃなかったけどさ、毎日怒られてばっかりで。ミスしないようにって思うと逆にやっちゃうんだよねー」 あっ……。同じだ。 「でもさ、言われたんだわ。"自信を持て"ってさ。簡単に言うよね?こちとらまだまだヒヨッコだっていうのにさ」 「ですね。仕事の事まだわからないのに」 「そう!そうなんだよ!だから必死で覚えたよ。そしたら自然に笑顔になれて自信もついた!ミスっても取り返せる!まずは…」 仕事を覚えろ…か。
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